祖先は恐竜だった
今から約2億年前、「プロガノケリス」という、全長1m、甲羅のサイズが60cmという陸に住む恐竜がいました。これがカメの祖先と考えられています。他の恐竜たちは、その後、環境の変化などに適応できず絶滅してしまいましたが、カメの祖先たちは頑張りました。環境に適応しながら今まで生き延びてきたんです。
リクガメの直系の祖先は「コロッソケリス・アトラス」だと言われています。生きていたのは今から約180~160万年前。見た目はゾウガメに似ていますが、全長2.5m、重さなんと4トン。草食で、クチバシ状の口の形をしているところから、現在のリクガメの生態とほぼ同じだったと考えられています。
首の引っ込め方は2通り
カメの首の引っ込め方が2種類あるのをご存知でしたか?1つは、首を横に折り曲げて甲羅に引っ込める、曲頸亜目(きょくけいあもく)。もう1つは、首を縦に折りたたんで引っ込める潜頸亜目(せんけいあもく)。リクガメは首を縦に折りたたむので、潜頸亜目というわけ。
潜頸亜目には、リクガメ上科、ウミガメ上科、ドロガメ上科、スッポン上科、カミツキガメ上科と、大きく5つの「上科」があり、さらにリクガメ上科は、リクガメ科、ヌマガメ科、イシガメ科、オオアタマガメ科の4つの「科」に分けられます。さらにさらに、リクガメ科は種類により「属」で分類され…つまり、リクガメは「潜頸亜目→リクガメ上科→リクガメ科→○○属」という形で、分類されているわけですね。
じゃ、一番下の「属」までいくと1種類になるのか、というとそうはいかない。「リクガメ属」には、アカアシガメ、インドホシガメ、キアシガメ、チヤコリクガメ、ヒョウモンガメ、ビルマホシガメ。「インドリクカメ属」には、エロンガータリクガメ、トランバンコアリクガメ、セレベスリクガメ。「チチュウカイリクガメ属」には、ギリシャリクガメ、フチゾリリクガメ、ヘルマンリクガメ、ヨツユビリクガメ、アラブギリシャガメ、ホルスフィールドリクガメ。「パンケーキ属」には、パンケーキリクガメ。「セオレガメ属」には、ベルセオレガメ、ホームセオレガメ。そう。一口に「リクガメ」といっても、何十種類ものリクガメがいるんです。
リクガメ日本上陸
リクガメが日本でペットとして紹介されたのは、1970年代になってから。ミシッシピーアカミミガメ(日本ではミドリガメ)が、安くて子供でも簡単に飼えるということで大人気になりました。今でもお祭りなどではよく売られていますね。
でも人気があったのはミシッシピーアカミミガメだけ。残念ながら地味なヨツユビリクガメやギリシャリクガメは見向きもされませんでした。1970年代後半になって、甲羅の模様がきれいなホシガメ、ヒョウモンリクガメなどが輸入されたものの、今度は、高価で飼育も難しいとあって、リクガメをペットとして飼う人はそれほど多くはありませんでした。
リクガメブームと現在
そんなリクガメが、注目を集めたのが「ワシントン条約」。絶滅に瀕した動植物を保護しようという、この条約に日本は1980年に加入。その結果、国際商業取引規制により、リクガメは簡単に輸入販売出来なくなってしまいます。皮肉にも、それがかえってリクガメに注目を集め、人気に火をつけることに。1990年代には、野生のリクガメを密輸する犯罪が増加、今でもニュースなどで「リクガメ」という言葉を時々聞きますよね。
現在、ペットショップなどで販売しているリクガメは、ほとんどが日本のブリーダーにより繁殖された日本生まれです。種類によっては、日本での繁殖が難しいリクガメもいますが、海外輸入のリクガメには、きちんとした許可の証明をつけなければなりません。
最近では適切な飼い方も徐々に知られるようになり、リクガメを飼うための便利なグッズも登場しています。昔に比べるとリクガメを飼うのはずいぶん楽になりました。鳴き声や匂いもほとんどなく室内で飼えるリクガメは、そういった意味では日本の住宅事情にはあったペット、といってよいのかもしれませんね。